春先からたすきリレーの準備に追われ、あっという間に当日を迎えという1年間が何度もめぐって、早9年目になりました。早いものです。ただのランニング好きが集まり、たすきをつなげて児童虐待防止を訴えようと始まったのが9年前。当時は児童福祉施設や児童相談所など児童福祉領域に携わる数十人がささやかに始めたこのイベントも、今や、様々な人たちが集まる大きなイベントへと発展しました。始めた当時は、今のイベントの姿を想像すらしていませんでした。東京都と神奈川県にまたがる3つのコースを、約700名のランナーが走り、ゴール会場に2万人近い方が訪れるイベントになろうなどとは、かけらにも思っていなかったのです。
第1回は、箱根から東京の読売新聞本社前まで2日間かけたすきをつなぎましたが、いまは、ゴールが横浜の山下公園とし、渋谷の忠犬ハチ公前からはじまる都心コース、湘南の二ノ宮町にある心泉学園からの湘南コース、鎌倉の大仏(高徳院)と三浦海岸から始まる鎌倉・三浦・横須賀コースの3コースが定着しました。ハチ公がスタート地点となったのは4回目から、大仏がスタート地点になったのは、東日本大震災のあった平成23年の5回目からです。ハチ公前は渋谷区とハチ公銅像維持会に、大仏のスタートには高徳院に、それぞれ「きっと無理だろう」と思いながらお願いにあがったところ、共にご快諾いただいたのでした。嬉しくて舞い上がったあのときを今でも鮮明に思い出します。ハチ公像には、専用の虐待防止のたすきもかけさせていただき、それからずっと啓発に協力していただいています。大仏には、震災復興プロジェクトとして、大仏サイズのたすきをキルトで作り上げることを決めました。今年ほぼそれが出来上がりました。10回目となる来年は、大仏に奉納予定です。児童福祉施設の心泉学園は、湘南コースのスタート地点として5回目から担っていただいております。どのコースのスタート地点も早朝のスタートのため、なかなか人が集まりにくいのですが、どこも年々人が増え、賑わうようになりました。
特に心泉学園には、学校の先生、消防隊員、警察官、米国軍人(キャサリンマイヤー米国海軍大佐をはじめとしたランナーが、湘南コースのすべての区に参加したすきをつなぎました)など多職種の方々が集まり、今年はこの第1区だけでランナーは50名を越えるほどとなりました。その中には村田邦子二ノ宮町長もおられます。また箱根からホノルルマラソンクラブのメンバー10人が、自主参加で、小田原から二ノ宮まで夜明け前から、たすきをつけてスタートに間に合わせて走ってこられました。すごいですね。スタートは施設の子ども達大勢の応援を受けてのスタートで、しかも施設から国道1号線までの私道は危険を伴うということもあり、大磯警察の白バイが先導してくださいました。白バイの先導といえば、新年に行われる東京箱根駅伝の白バイ隊の姿が頭に浮かぶのではないでしょうか。白バイ先導でランナーが走ることは、私たちの夢のひとつでしたので、短い距離ではありましたが、それが適ったことは大変嬉しく、神奈川県警ならびに大磯警察署に心からお礼申し上げるしだいです。いつの日か、子ども虐待防止を訴える市民が公道を埋め尽くすほど集まって白バイ先導でたすきをつなげられたら、そんな夢のようなことをひそかに願っています。
茅ヶ崎高校の皆さんも参加今年の発展は、高校生をはじめ専門学校生、短大生、大学生など多くの学生がこの活動に関心を持っていただき、協力してくれたことです。湘南コースは、昨年から茅ヶ崎高校・セブンイレブン茅ヶ崎本村3丁目店が第4中継所となり、茅ヶ崎高校の高校生がキャンペーンに協力してもらうようになり今年の生徒会も昨年同様引き継がれ、さらに高校生が13名ランナーとして走られました。都心コースも、大学生が13名第2区を走られました。
学生さんの参加はとても嬉しいことですし、重要と考えています。子ども虐待の連鎖を断って、次の世代が虐待のない社会となるよう、多くの学生がこの問題に関心を持ち、すべての子どもが幸せに暮らす社会創りを目指し、社会に貢献してほしいと願うからです。
茅ヶ崎高校の学生の他にも多くの学生がこの取り組みに協力してくれています。鎌倉・三浦・横須賀コースのスタート地点である高徳院では、ランナースタート後鎌倉女子大の学生さんが、3年前から鎌倉市と共に啓発キャンペーンに力を注いでくれています。また横浜保育福祉専門学校の学生さんも、イベントに向けての準備から協力してくださいました。残念ながら当日は専門学校の文化祭と重なり、イベントには参加できませんでしたが、文化祭でオレンジリボンたすきリレーの紹介と共に子ども虐待防止の啓発を行ってくれました。ゴール地点は、全国の大学生で構成されている「全国福祉未来ネットワーク」に所属する大学生が複数参加され、運営・啓発に協力してくれました。「全国福祉未来ネットワーク」は都心コースのスタート地点である渋谷区で、当日も含めて1週間、渋谷で児童虐待防止の啓発活動に取り組まれました。
先に湘南コースの第1区で、二ノ宮町の町長が第1区を走られたことを述べましたが、鎌倉・三浦・横須賀コースでは、これまでも市長や町長さんが走られています。鎌倉市の松尾市長はこのコースが設定された第5回たすきリレーから毎年必ず走られています。5年前に鎌倉市のご協力を求めて鎌倉市にうかがったところ、松尾市長自らがお話を聞いてくださいました。松尾市長は、子どもの福祉にもとても造詣が深く、市長になる前には、市庁舎の近くにある児童養護施設「鎌倉児童ホーム」の行事などにボランティアとして、積極的に関わっておられたと聞いています。市長さんや町長さんが、率先して啓発のために参加していただけることは、われわれにとってどれほど心強いものか、回を重ねることに、その重みを感じています。
参加するランナーは年を追うごとに増えています。昨年は500名を越えましたが、今年は699名のランナーが参加されました。また当初は、児童福祉施設や児童相談所の職員の方々が多かったのですが、先述した湘南コースの第1区に象徴されるように、多分野多職種の方々が参加されるようになりました。児童虐待問題への取り組みは、児童福祉の領域だけでは充分な対応はできません。この問題を抱えた子どもと家族は、複数のニーズを抱えているため、多領域多職種の協働による支援が不可欠なのです。たすきリレーは、違う立場の人々が同じ願いをこめて、たすきをつないでいくという、「協働」の大切さを象徴した活動なのです。啓発活動には2つの種類があると常々思っています。一つは、多くの方々の目にとまるような情報の発信です。ランドマークをライトアップするものや、インターネットでメッセージを発信するなど様々です。ただし、現代社会は情報にあふれています。その膨大な情報の中で、ひとつの情報を心に刻ませるのは困難でもあります。
もう一つの啓発の形は、参加型の啓発活動です。啓発する当事者として参加していただくことです。われわれのたすきリレーは、まさにこれにあたります。ランナーとして一度でも走った人は、子ども虐待について、しっかりと心に刻まれるはずです。他の人々よりもはるかにこの問題に関心をもち、様々な機会で、それを話題にしたり考えたりするでしょう。それがねらいです。ですから、児童福祉分野の方よりも、他の領域の方や一般市民の方のランナーが増えてきたのは、本当に嬉しいことなのです。
ゴール地点である山下公園では、午前11時から子ども虐待防止啓発のためのイベントが開催されました。昨年から、敷地内のブース展示が充実し、親子が楽しく過ごせるような企画を増やしたのですが、今年はさらにそれをグレードアップしました。
昨年に続き「クロバー株式会社」が、親子で手づくり体験コーナーを設け、「横浜市民生児童委員協議会・横浜市主任児童委員連絡会」では、3Dめがねとストローで風車を作るコーナー、子どものためのシェルターを運営する「NPO子どもセンターてんぽ」は、オレンジリボンアドバルーンの製作、「NPO CROP.-MINORI」による昔懐かしい子どもの遊びの体験コーナーなど、親子向けのブースが6箇所も設置されました。「宅地協会横浜南部支部」のやきそばや「NKKシームレス鋼管」のコーヒーやクッキーは大人気で、長蛇の列ができるほどでした。また本部では、オレンジリボンの由来をはじめ、日本の児童虐待の現状、防止対策などパネルにして情報提供に努めました。
ステージ上では、音楽、パントマイム、ダンス、ヒーローショーなどの多彩なプログラムが展開しました。またランナーと会場を結ぶ音声中継も昨年以上に充実しました。ステージ上でランナーがどの中継所を通過したか、すぐに分かるように大型のコース図をパネルで提示し、現地の音声と共にランナーの状況がすぐに把握できるようにしました。このことはとても好評でした。来年度以降はこれをスタンダードにしていきたいと思います。
ステージ上では、恒例となった土田聡子(プーカ)さんのライブ、クラウンジュカと仲間たちのパントマイム、そしてイチゴパフェの親子コンサートが行われました。親子コンサートでは横浜市立相武山小学校のダンスチームが今年も参加され、イチゴパフェさんとのコラボレーション・歌とダンスのパフォーマンスに皆を楽しませてくれました。イベント会場は終日大勢の人たちが来場され、大きな賑わいを見せました。
ステージ上で川崎二三彦大会会長のあいさつが終わるころ、各コースのランナーたちが例年通りに山下公園の西口に集結しました。総勢100名ほどとなりました。これから山下公園を横断し石のステージに向かって、そこまで通じている公園内の海側の道と内陸側の道(約700メートル)の二手に分かれての最後の走りです。ゆっくりとイベント会場のゴールに向かいます。皆笑顔です。公園を訪れた多くの方に見守られながら走ります。石のステージ前では、20メートルほどに張られたオレンジ色のゴールテープがランナーを待ちます。
3時40分、一斉にゴール!
1万キロ達成 歓喜の井上さん ランナーはもちろん、この場にいるすべての人が満面の笑顔です。各コースの代表ランナーに川崎二三彦会長から完走賞が渡されました。その中には、昨年このゴール会場からスタートし、1年間、全国を走り回ってたすきリレーの実施を呼びかけ、児童虐待防止を訴えた井上幸夫さんの姿がありました。全国を走破し、本日は都心コースのランナーと一緒に、全区間走り抜けて、70名のランナーと一緒に、自身の全国一周1万ランのゴールをきられたのです。本当にお疲れ様です。苦しいときは何度もあったと思います。よくぞがんばられました。ありがとうございました。この場にいる多くの方々の口から、労をねぎらう声や、感謝の声が井上さんに届けられました。
今年は、オレンジリボンたすきリレーを行う地域がぐっと増えた年となりました。小山市と滋賀県では、毎年私たちのリレーの1週前に開催されて、ここにたすきがつながれています。そして私たちのたすきはこの後開催が予定されている岐阜県、名古屋市、静岡県、長野県の代表の方に手渡されました。ことしはこれ以外にも、高知県、山口県、宮崎県、鳥取県、茨城県、徳島県、福島県でも開催されました。たすきの輪はますます広がってきています。こうした開催県とは、厚く連携をとって、全国のたすきリレーネットワークを築きたいと願っています。開催されました実行委員会の皆様、関係者の皆様、お疲れ様でした。またこれからも一緒にがんばりましょう。
約700名となりましたランナーの皆さま、そしてキャンペーン会場で歌やトークをしていただきました皆様に感謝申し上げます。
次の方々には財政面での支援をしていただきました(敬称略)。(公財)資生堂社会福祉事業財団、(公財)楽天未来のつばさ、(財)神奈川新聞厚生文化事業団、(株)ガリバー、サッポロホールディングス(株)、ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)、(株)セブン-イレブン・ジャパン、ユースキン製薬(株)、エヌケーケーシームレス鋼管(株)、(一社)東京キワニスクラブ、カードショップカリントウ、(司)星野合同事務所、(株)whitedesign、かながわ信用金庫、湘南信用金庫、神奈川県生命保険協会、(公社)神奈川県宅地建物取引業協会横浜南部支部、神奈川県保険医協会、YMCA鎌倉、用賀おたふく、用賀カイト、上野毛伊仙、(株)伊藤園、湘南ヤクルト販売(株)、クロバー(株)、(有)東京仁藤商店、その他の団体。心より感謝申し上げます。また、子どもの虹情報研修センターで行われる研修期間中に募金をお願いしたところ多くの方々が協力をしてくださいました。ありがとうございました。
次にあげさせていただく後援の機関、団体の方々からは、大きなご支援をいただきました(敬称略)。厚生労働省、東京都、神奈川県、神奈川県警察、横浜市、川崎市、鎌倉市、渋谷区、大田区、品川区、逗子市、横須賀市、三浦市、茅ヶ崎市、平塚市、葉山町、二宮町、大磯町、栃木県小山市、神奈川県社会福祉協議会、全国児童相談所長会、神奈川県児童福祉施設協議会、神奈川県母子生活支援施設協議会、神奈川県保険医協会、神奈川県教育委員会、東京都社会福祉協議会、横浜市ファミリーホーム連絡協議会、川崎市あゆみの会、(財)神奈川新聞厚生文化事業団、(株)資生堂、鎌倉高徳院、渋谷忠犬ハチ公銅像維持会、(一社)東京キワニスクラブ、彩樹園、鎌倉力車(株)プラネス、その他の団体。大変ありがとうございました。
スタートや中継所等の設定にご協力をいただきました(敬称略)。心泉学園、エリザベスサンダースホーム、遊行寺、西横浜国際総合病院、横浜市立永野小学校、永谷連合町内会、港南区民生・児童委員、平塚馬入ふれあい公園、茅ヶ崎高校、セブンイレブン茅ヶ崎本村3丁目店、(株)湘南ベルマーレ、渋谷忠犬ハチ公銅像維持会、渋谷区観光協会、渋谷区子ども家庭支援センター、渋谷ピアネット、東京都児童相談センター、東京タワー、泉岳寺品川児童相談所、品川区民生・児童委員、大田区子ども家庭支援センター、大田区立大森スポーツセンター、大田区民生・児童委員、ユースキン製薬(株)、川崎市あゆみの会、鶴見区役所、セブンイレブン横浜浦島町店、鎌倉高徳院、鎌倉児童ホーム、鶴岡八幡宮、葉山町商工会、森戸大明神、サンビーチ追浜、セブンイレブン横浜片吹店、横浜市中央児童相談所、イセザキ・モール1・2St.、協同組合伊勢佐木町商店街、ホテルマホロバマインズ三浦、久里浜商店会協同組合、team黒船、しらかば子どもの家、春光学園、幸保愛児園、三浦しらとり園、金沢区民生・児童委員、磯子区民生・児童委員、横浜市磯子センター、神奈川県立こども医療センター、YMCA鎌倉
キャンペーン会場でブースを設置していただくなど会場を盛り上げていただきました(敬称略)。神奈川県、おおいそ学園、資生堂社会福祉事業財団、(株)セブン-イレブン・ジャパン、全国児童家庭支援センター協議会、横浜市こども青少年局、横浜市民生委員児童委員協議会横浜市主任児童委員連絡会、カンガルーOYAMA、(特非)CROP.-MINORI、神奈川県母子生活支援施設協議会、(特非)子どもセンターてんぽ、ユースキン製薬(株)、エヌケーケーシームレス鋼管(株)、栗原さんをはじめとするパントマイマーの皆様、高田馬場・ジェットロボット、こくぶともみさん、坂本博之さん、土田聡子さん(プーカ)、イチゴパフェ、横浜市立相武山小学校、東京都社会福祉協議会児童部会従事者会、鎌倉市役所、鎌倉女子大学・鎌倉女子大学短期大学部、横須賀市役所、関東学院大学・明治大学など学生の皆さん、港南区社会福祉協議会、(特非)国境なき楽団、クロバー(株)勝山泰江さんとその仲間たち、(特非)全国福祉未来ネットワーク、練馬イクメンパパプロジェクトほか。またご寄付をいただいた方々その他このイベントにご支援ご協力をいただいた方々に深く感謝いたします。
さらに次にあげさせていただく方々には、キャンペーン会場でリボンやチラシを配るなどのボランティア活動をしていただきました。横浜キワニスクラブ、渋谷区子ども家庭支援センター、東京都児童相談センター、永谷連合町内会、品川区民生・児童委員、東京都社会福祉協議会児童部会従事者会、戸塚区民生・児童委員、心より感謝申し上げます。
オレンジリボン作成にご協力いただいた、港南区社会福祉協議会、下永谷地区民生委員、川崎市あゆみの会、横浜キワニスクラブ、エキスパート・チャリティ・アソシエーション、日本アムウェイ合同会社、鎌倉児童ホーム、CROP.、専門学校・大学生、有志ボランティアの方、心より感謝申し上げます。
そして、平成23年度から始まった新プロジェクト「祈りの『Friendship』キルトたすき」の製作では、キルト作家若山雅子さんをアドバイザーに、勝山泰江さん、荒井美夏さんとその仲間たちにご尽力いただきました。心より感謝申し上げます。